アイ メディカル クリニック 高血圧症

血圧管理の重要性

患者さんに 「血圧のお薬を飲んでみましょう」と申しあげると、「一生ずっと飲まなくちゃいけなくなるんでしょ?」と質問されます。たとえ飲み始めても、血圧が高いままなのに勝手に薬をやめちゃう方も少なくありません。お薬を飲み続けるというのは、誰にとっても心理的抵抗があるものです。

 

しかし高血圧を放ったらかした場合は、ちゃんとコントロールした場合に比べ、早死にしてしまう確立がずっと高くなるのです。もちろん高血圧治療の基本は、食事や運動などの日常生活管理ですが、それらで改善しない場合は降圧薬が必要になります。ご自身の血圧を掌握して頂いた上で、必要に応じて適切な服用をして頂くことがとても大切なのです。

 

将来、愛するご家族を悲しませないためにも。

新たな治療指針について

高血圧症の診断や治療のガイドラインが、5年ぶりに改訂されました。ガイドラインとは、「高血圧症の診断と分類及び治療を、こんな感じで行っていきましょう」という、日本の医者に共通したマニュアルのようなものです。もちろんそれに従うかどうかは個々の医師に任されていて、自分の考え方や経験も加味して、最終的な判断を行うわけです。

 

正常高値?

今回の改訂における最大の特徴は、正常高値の血圧という概念の導入です。これは「一応正常範囲内なんだけど、高血圧症ギリギリで注意せねばならない」というような意味合いで、上の血圧が130〜139、または下が85〜89に達する人です。
世界各地で行われている最近の疫学的調査の結果から、やはり血圧はしっかり下げなくてはいけないという事がグローバルに再認識されました。そしてもうひとつ、改めて確認されつつある事実があります。それは合併症のある人は、なおさらきちんとした血圧管理が必要、ということです。

 

これらの認識に基づき、正常高値血圧の場合でも、将来への危険因子がある方は、血圧を下げる治療を始めるべきと提唱されました。ここで言う危険因子とは、糖尿病、腎臓病、心臓病などの成人病の合併はもちろんですが、喫煙や肥満も、立派な危険因子です。そして生活習慣の改善で血圧が改善しない場合は、お薬を飲む必要があるのです。。

 

「軽度の高血圧の場合、薬を飲んでまで下げる必要があるのだろうか? 長い目で見た場合、かえって有害なのではないか?」というのは、何十年もの間議論されてきた命題ですが、ようやく結論が出たと言ってよいでしょう。

降圧薬の種類と選択

降圧薬の選び方についても、いくつか変更点がありました。大きな点としては、古くから使われているα(アルファ)遮断薬という種類の薬剤が第一選択からはずされ、(例えるなら補欠に回され) 逆に補欠扱いだった利尿薬が、先発メンバーに昇格したことです。α遮断薬は「寝る前に服用することにより、朝方起こり易い脳卒中を予防できる」との認識から、ドクターの中には根強いファンがいたのですが、「脳卒中や心不全などが将来合併するのを、防止できるというエビデンスに乏しい」との理由で、今回は補欠扱いになりました。利尿薬はやはり古くからある薬なのですが、「痛風を誘発したり、血液の電解質バランスを乱したりして、使いづらい」との観点から、近年は補欠に甘んじていました。トイレへ行く頻度が増えるため、患者さんからも遠ざけられていた面があり、実態は補欠どころか二軍選手なみの扱いでした。ところが最近の研究で、使用量を従来の半分から4分の1にすれば副作用はほとんど問題にならない一方、相応の降圧作用が期待できることが確認され、再び先発メンバーに加わったのです。

 

 

ここで降圧薬の種類を、ご紹介します。

 

カルシウム拮抗薬

血管壁の筋肉におけるカルシウムの移動を妨げることにより血管を拡張し、血圧を下げます。日本国内では、現在最も多く処方されている降圧剤です。 その理由は
@確実で強力な降圧作用
A血管が拡張して抵抗が減るので、ポンプ役の心臓の負担が減る。
B血管が拡張して流れが良くなることで、脳、腎臓、冠動脈(心臓を養う血管)など大切な部分への血流も増加する。
C糖尿病、高脂血晶など他の成人病があっても、安心して使える。
D比較的値段が安く、またジェネリクスも多いので、患者さんの負担が軽い。
 ・・・ といったところでしょう。

 

長所・短所は裏返し、なんてよく言われますが、頻度の高い副作用は血管拡張作用に起因するもので、頭痛や動悸、顔面のほてり感などです。

 

α遮断薬

交感神経のα受容体をブロックする薬です。「受容体」と言われてもイメージ沸かないかもしれませんが、要するに「スイッチ」のことだと考えて下さい。このα型スイッチは主に血管壁の筋肉に存在し、これが押されることにより筋肉が収縮し、血管が狭くなってしまうのです。α遮断薬はこのスイッチを効かなくすることにより血管径を拡げ、内圧を下げるわけで、その意味では前述のカルシウム拮抗薬と似た作用をもっています。

 

α型スイッチは前立腺の筋肉にも多く存在しますので、α遮断薬により前立腺も緩みます。そのため、前立腺肥大による排尿障害のあるご高齢の方々には、”一挙両得”の便利なお薬です。しかし前述の経緯により、降圧剤としてはワキ役に回されることになってしまいました。

 

β遮断薬

こちらは交感神経のβ型スイッチを、ブロックするお薬ということになります。かなり大雑把な言い方をすれば、β型スイッチを押すことで心臓が頑張り始めるわけです。心拍数を増やし体中にガンガン血液を流しなさいと、心臓に命令することになります。逆にβ遮断薬の投与で、心臓は無理に働くことをやめて力を抜くようになるのですが、これにより血圧が下がるのです。心臓が頑張りすぎるとマズイ病気、例えば狭心症や心筋梗塞の患者さんには好都合です。

 

ところが心臓が力を抜きすぎてしまうと、今度はそれが副作用となります。脈拍が少なくなり過ぎたり、場合によっては心不全の状態を招くことさえあります。またβ型スイッチは、気管支の内径を拡げ空気の流れを良くする働きがあります。β遮断薬を投与すると気管支は狭まり、空気の流れが悪くなってしまいます。ですので喘息の患者さんは、絶対にこのお薬を飲んではいけません。

 

医者にとっては、多少匙かげんの難しいお薬です。

 

ACE(アンジオテンシンU変換酵素)阻害剤

アンジオテンシンUという物質を作り出す酵素の働きを、邪魔することで血圧を下げる薬です。アンジオテンシンUは血管を収縮させたり(内径が狭まる)、アルドステロンという血圧を上げるホルモンを増やしたりして、直接・間接に血圧を上昇させます。

 

カルシウム拮抗薬や後述のARBに比べ降圧作用では劣るものの、心臓や腎臓など多くの臓器を長期的に保護する面があることが分かってきました。惜しむらくは、けっこうな頻度で、カラ咳の副作用が出ることです。かなりしつこい場合が多く、会話や睡眠の妨げにもなるので、たいていは継続を諦めねばなりません。

 

ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)

こちらは、アンジオテンシンUの働きを邪魔することで、血圧を下げます。新しいタイプの降圧薬でありながら、最近はカルシウム拮抗薬の座を脅かすまで処方量が増えてきてます。確実な降圧作用、長い作用時間、少ない副作用(ACEI ) にみられるカラ咳も出ない)などの 使いやすさによるものでありましょう。

 

欠点を挙げるとすれば、新しい薬であるためまだまだ薬価が高く、患者さんの負担が大きくなってしまうことでしょうか?

 


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